『ジョジョの奇妙な冒険』4部、ダイヤモンドは砕けないの主人公、東方仗助。
仗助は幼少期に高熱を出し、死の淵をさ迷った経験があります。
そんな仗助を、正体不明の不良が助けました。
この不良に関して、『過去に飛んだ仗助自身』という説が語られていました。現在は公式的に否定され、「仗助の美しい思い出」とされています。
しかし、ジョジョファンなら一度は『謎の不良=仗助説』を考えたはずです。
リアルタイムでジャンプを読んでいた人なら尚更。
今回は『謎の不良=仗助説』を正しいものと仮定し、その根拠を考えていきます。
過去に行った仗助?
第4部のラスボス、吉良吉影は時間を巻き戻す能力、「バイツァ・ダスト(土でも食ってろ負けて死ね)」を会得します。
任意の相手にキラークイーンを乗り移らせ、その相手から吉良の情報が漏れると自動的に発動。吉良の情報を手に入れた相手を爆殺し、時間を1時間ほど巻き戻す能力です。爆殺された相手はその「運命」が固定され、巻き戻した後も「運命」の時間になれば必ず爆破されます。
「時間そのものを爆破する」と表現される、絶対無敵の能力です。
このバイツァ・ダストの元ネタは、QUEENの『Another One Bites The Dust (邦題:地獄へ道づれ)』です。
Queen - Another One Bites the Dust (Official Video)
吉良の能力は曲名の後半だけしか使われていません。邦題の「地獄へ道連れ」は、技名としてはこれ以上ないくらい相応しいですよね。
構想段階では、キラークイーンの最後の爆弾は「アナザーワン・バイツァ・ダスト」という名前だったのではないでしょうか?
吉良はバイツァ・ダストを任意発動出来ない=能力としてはまだ未完成?
根拠は曲名だけでなく、バイツァ・ダストという能力そのものにもあります。
バイツァ・ダストは任意で発動出来ず、攻撃はキラークイーンを乗り移らせた相手に任せる形です。
これは「戦闘は極力避けて平穏に暮らしたい」という吉良の望みに叶っています。第二の爆弾であるシアーハートアタックも攻撃は自動で行われるので、吉良は優雅にアフタヌーンティーを飲みながら敵の始末完了を待つだけで済みます。
よって吉良が直接敵を始末する場合、使えるのは第一の爆弾「触れたものを爆弾に変える」という能力だけです。
これだけでも充分強いのですが、直接攻撃の手段としては乏しいですよね。
ここでバイツァ・ダストが出ます。
元ネタとなる曲名を考えるなら、バイツァ・ダストの先にもう1つの能力がありそうです。
それが第四の爆弾「アナザーワン・バイツァ・ダスト(地獄へ道連れ)」です。
平穏な生活を守る為に攻撃のほとんどをキラークイーンに任せていた吉良が、
「コイツだけはッ! 私自身の手で葬らなければならないッ!」
と心から決意した時のみ発動する爆弾。
あるいは平穏に生きるという望みが絶たれた上、殺されてしまった吉良の怨みにより発現した能力。
バイツァ・ダスト以上の能力があるなら、こういったものでしょう。
キラークイーンの成長性はA=まだ成長する可能性あり
スタンドにはパワー、スピード、射程距離などのステータスがあり、この数値(評価)は一体ごとに異なります。ステータスには成長性というものがあり、これが高いほど強いスタンドに成長する可能性がある事を意味します。
キラークイーンの成長性はAです。つまりまだ成長する可能性があります。
空条承太郎のスタープラチナは「成長性:完成」となっています。これ以上成長しなくても良いくらい強くなったという事です。
成長しないスタンドは「完成」や「無し」などと評価されます。
つまり成長性の評価がA付近であれば、成長する可能性は充分あると言えます。
第四の爆弾、アナザーワン・バイツァ・ダスト(地獄へ道連れ)
以上の事から、キラークイーンはもう1つの能力、すなわち第四の爆弾が発現する可能性があります。
その能力は、吉良が「平穏な生活を守るため、自分自身の手で確実に敵を始末する」と決意した時、
あるいは「自分を死に追いやった人間を道連れにしてやる」と願った時のみ発動する爆弾です。
ジョジョ風の解説を書くなら以下のようになります。
能力名:「アナザーワン・バイツァ・ダスト(地獄へ道連れ)」
任意の相手を自分もろとも過去へ飛ばし、絶対に助けが来ない1対1の状況を作り出す。
戦闘を好まず、敵の始末をスタンドに任せる事の多い吉良が、自分自身の手で確実に始末する事を望み発現した能力。元の時間に戻るには吉良に負けを認めさせる(心を敗北させて魂の力を0にする)必要がある。
もし吉良が負けを認めずに死んだ場合、能力の解除が出来ないので、元の時間に戻ることは絶望的。
もしもキラークイーンが新しい能力を発現するとしたら、こういった能力でしょう。
キラークイーンが第四の爆弾を会得する可能性の根拠は以上です。
続いて、子供だった頃の仗助を助けた不良が仗助だとする根拠を挙げていきます。
過去の描写は康一の主観
謎の不良の服装は学ランで、頭はリーゼントです。全体的に仗助そっくりですが、学ランの細かいデザインは仗助のそれとは異なります。
康一も回想に入る前、「自分の主観が入っている」と言っています。まるで伏線だと言わんばかりに、コマの端っこに小さく。
よくみると文字の大きさも若干小さく、さりげなーく書いてありますよね。
こんな書かれ方をされたら、伏線だと疑わない方が無理っつ~ものっスよォ~、荒木先生ッ!
「子供が病気ならクレイジーダイヤモンドで治せば良いじゃん?」への反論
仗助のスタンド、クレイジーダイヤモンドの能力は「触れたものを治す」です。割れたガラスに触れれば元通りに直りますし、バラバラになったバイクも綺麗に修復可能。
甲羅が痛々しく割れたカメも治せますし、全身骨折の重傷者も瞬時に回復させる事が出来ます。
そんな能力を持っているなら、なぜ病気の子供をクレイジーダイヤモンドで治さなかったのか?
これは簡単です。クレイジーダイヤモンドは病気を治せません。治せるのは怪我だけ。
これは4部を読んだ人でも知らない場合があります。「治す能力」の印象が強すぎるのて、何でも治せるように錯覚してしまうようです。
また、コアなファンでも勘違いしている場合もあります。これはスタンドの矢の設定が原因です。
スタンドの矢に貫かれると特殊なウイルスに感染し、そのウイルスに打ち勝ち、生き残った者だけがスタンド能力を手にいれます。これはウイルス進化説という仮説で、中原英臣氏(新渡戸文化短期大学)と佐川峻氏(科学評論家)が主張しました。
(この設定が判明したのは第5部と遅い上、矢に貫かれて瀕死だった者をクレイジーダイヤモンドで治すシーンがある)
ウイルス感染は怪我より病気に近い為、病気も治療可能だと勘違いしやすいです。
しかしクレイジーダイヤモンドで病気は治せません。よって高熱を出した子供がいても、仗助が直接治すことは出来ません。
謎の不良と同じ状況なら、仗助は何も考えず子供を助けるはず
皆さん、ちょっと想像してみてください。
仮に仗助がキラークイーンの能力で過去に飛んだとします。
そこで吉良を倒す事に成功しました。
全身傷だらけの状態で立ち尽くしていた所、遠くに一台の車を見つけます。
その車は雪道にタイヤをとられて動けず、運転手は若い女性、後部座席には高熱に苦しむ小さな子供……。
想像できましたか?
次にお前は「仗助も過去の自分自身だと気付くはずだ」と言う!
仗助が高熱を出した日、雪が降っていたこと、車が動かなくなったこと、そして謎の不良が車を押してくれたことをおぼろ気ながら記憶しています。
その仗助がそっくりな状況に遭遇したら、「グレートッ……!このガキは小さい頃の俺じゃねえかッ!」と思いそうですよね。
しかし私は、仗助は気付かないと考えています。というより、仗助ならそんな余計な事を考えずに子供を助けるはずです。
それは仗助の性格を見れば分かります。
仗助は自分を助けた不良を心の底から尊敬しており、同じリーゼントにしています。
第4部の年代設定は1999年。リーゼントも時代遅れになっていた頃ですが、仗助はそんなことも気にしません。
髪型をバカにされると我を忘れて激昂します。仗助にとって髪型をバカにされるのは、「自分が憧れる不良をバカにされた」のと同義だからです。
そこまで謎の不良を尊敬している仗助が、その不良と同じ状況に立たされたら?
つまり、雪道で動けず、高熱に苦しむ子供が乗っている車を見たら?
仗助は迷わず助けるという選択を取るはずです。
何故なら、憧れの人が同じように自分を助けてくれたから。
康一が虹村億泰に襲われた時、仗助は危険を省みずに康一を助けました。
億泰が刑兆のスタンドに攻撃された時は、さっきまで敵だった億泰を助けました。
康一と億泰が岸部露伴に襲われた時は、勝ち目が無いのに露伴に戦いを挑み、2人を助けました。
露伴が敵に襲われた時は、露伴が「逃げろ!」と言ってくれたにも関わらず、露伴を見捨てて逃げることはせず助けようとしました。
このように、仗助は誰かが危機に晒されていたら、自分の身を呈して助けようとします。
仗助がここまで優しい性格になったのは、謎の不良に憧れているからです。
すでに傷だらけで体力も無くなっているであろう「謎の不良」が、自分の勲章であろう学ランを迷わずタイヤの下に敷き、車を押して自分を助けてくれました。
謎の不良から「黄金の精神」を受け継いだ仗助は、危険に晒されている人を見たら必ず助けます。
そういった生き方をする事で、謎の不良と同じヒーローになれる……そう考えるからです。
よって、仗助がかつての自分と同じように高熱に苦しむ子供を見たら、どんな状況であっても助けるはずです。
「もしやこの子供は過去の自分ではないのか?」などと考えず、ほとんど無意識に。頭よりも体が動くはずです。
髪型をバカにされるだけで信じられないくらい激怒する仗助です。
謎の不良と同じ状況に立たされれば、一も二もなく子供を助けるでしょう。
もしも第四の爆弾があったとして、なぜ作中に出てこなかったか?
構想段階でキラークイーンに「第四の爆弾」というアイデアがあったとして、なぜ作中に出てこなかったのでしょう?
これはキラークイーンがあまりに強くなりすぎたからです。
荒木飛呂彦先生は、キラークイーンが強くなりすぎた為、「どうやったらコイツに勝てるんだ?」と本気で頭を悩ませたそうです。
どれだけ考えても勝ち筋が見えず、主人公達が全滅するバッドエンドを本気で書こうとしたという逸話が残っています。
第3部のDIOに関しても、「どうやって倒すか悩みすぎて、しばらくDIOを見るのが嫌になった」とされています。
確かに第3部終了後、DIOは6部まで再登場していないので、信憑性があります(といっても第6部ではかなり多く出てきましたが……)
もしもキラークイーンがあれ以上強くなったら、さすがの荒木飛呂彦先生も老け込んでいたかもしれません。
「こんな楽な仕事をしててバチがあたらないかなあと思いつつ 担当さんに食事をおごってもらってタダめしを食べる。ごちそうさま」なんて言っている荒木先生ですが、やはりそれなりに苦労はしているようです。
当初は第四の爆弾というアイデアがあり、仗助が過去に飛ばされるという構想もあったのかもしれません。
しかし第三の爆弾が発現した時点でキラークイーンが強くなりすぎた為、どうやって倒すか考えるのだけで精一杯になり、第四の爆弾はお蔵入り。
仗助を助けた不良は、仗助の美しい思い出という設定に変更した……のだと思います。
仗助を助けた謎の不良=仗助説
まとめると、以下のようになります。
- バイツァ・ダストの元ネタはQUEENの『Another One Bites The Dust (邦題:地獄へ道づれ)』。技名に使われたのは後半だけで中途半端。
- 吉良はバイツァ・ダストを任意発動出来ない。能力としては未完成?
- キラークイーンは成長性A。バイツァ・ダスト以上の能力が発現する可能性はある。
- 仗助の過去は広瀬康一の回想。康一の主観が入っており、完全な再現ではない。
- クレイジーダイヤモンドは病気を治せない。高熱を出した子供を直接治すことは出来ない。
- 仗助は自分を助けた不良に心底から憧れている。だから危機に晒されている人がいたら自分の身を呈して助けようとする
- もしも仗助が謎の不良と同じ状況に立たされたら、迷わず子供を助ける。憧れの人が同じように自分を助けてくれたから。
- バイツァ・ダスト発現時点でキラークイーンが強くなりすぎ、倒すので精一杯になったので結末を変更した
謎の不良=仗助説は作者が否定しています。
しかし作中を見渡すと、当初はそういう構想だったのではないかと感じる要素がいくつもあります。
ジョジョはファンが多く、その中には私のように『謎の不良=仗助説』を真剣に考察した人も多いでしょう。
こういった楽しみ方も大いにありだと思います。ロマンというやつですよね。