怪物王女10話『追憶王女』レビュー。人造人間は自由の夢を見るか

物王女10話『追憶王女』レビューです。
今回は怪物王女屈指の鬱展開と言えるかもしれません。


人造人間、シエル

今回はフランドル、フランシスカ以外の人造人間が登場します。


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買い物中のフランドルが出会ったこの男性。
この人も人造人間ですが、フランドルやフランシスカと違い、人間と変わらぬ会話が可能です。



この人造人間の名前はシエル。もともと名前を持っておらず自分で名付けたそう。
シエルの体は痛んでおり、顔も機械部分が剥き出しになっています。自分を修理できる人を探していました。


シエルは姫の屋敷で修理をうけつつ、屋敷の仕事をする事になります。

フランドルがシエルを修理

修理はフランドルがするようですが、人造人間が人造人間の修理を出来るのか?


リアルに考えると出来なさそうですよね。人造人間が現実で作られるとなると、おそらく人工知能や学習回路も組み込まれるはず。
そして修理が出来るという事は、人造人間の製造法もインプットされていると考えるのが自然です。


それってつまり、『人造人間が人造人間を作り出す』という事も出来るという訳で、人造人間が自己増殖できる事になります。

人間が作らなくても人造人間が勝手に増えていくって、なかなか恐怖ではないでしょうか?そのうち数を増した人造人間が人間を滅ぼすための戦争を行う、ターミネーターのような世界ができてしまいそう。

ロボット三原則をプログラム化すれば防げるのかもしれませんが。



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一方ヒロはフランシスカによって、シャーウッドの屋敷に連れてこられていました。
リュウリュウ、カンカン、チョウチョウの三兄弟に揉まれるヒロ。
呂布かよ(笑)

シエルが知った”自由”

屋敷で雑務をこなしつつ、フランドルに修理を受けるシエル。

修理を受けるシエルはフランドルに貝殻を見せ、そしてフランドルに自分の身の上を打ち明けます。


シエルはかつてデューテリウム鉱山(重水素?)と呼ばれる場所で働いていた人造人間。あるとき、鉱山からの脱出を試みます。鉱山から逃げたシエルは何日も歩き続け、海に辿り着きます。
産まれて初めて海を見て、自由という概念を知りました。この時に拾った貝殻を宝物として大切にしていたのでした。


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フランドルにこの宝物を見せたのは、修理してくれたお礼と、同じ人造人間であるフランドルへの仲間意識からですね。
別にフランドルにも「逃げ出せ」と言いたいのではなく、自分が気付いた事をフランドルにも教えたかったのだと思います。命がけで逃げた事により知った事を、フランドルにも伝えたかったのでしょう。

シエル、余命1年と宣告

さて、順調に修理が進むシエルですが、回路に損傷が見つかりました。ここだけは修理が出来ず、毎日メンテナンスしても1年が限度だそう。


王国に戻れば治せますが、シエルは旅を続けることを決意。王国に戻れば記憶を消され、せっかく知る事の出来た自由を忘れてしまいます。
シエルは全てを忘れて生き長らえるより、自由を知って死ぬことを選んだのです。


シエルはフランドルに別れを告げます。宝物の貝殻をフランドルに渡し、「僕を忘れないでくれ」と言い残します。


人造人間に心が芽生えるこの展開。『フランケン・シュタインの怪物』を彷彿とさせます。


シエル暴走。告げられる真実

しかしその夜、突然シエルの様子がおかしくなり、姫に襲いかかります。
フランドルはシエルを止めようとしますが、シエルに投げ飛ばされた事で故障してしまいます。


姫がさらわれそうになったとき、シャーウッドとフランシスカが登場。

フランシスカには格闘サブルーチンが組み込まれており、戦闘技術はフランドルよりも上です。フランシスカによって止められたシエルは、姫から真実を明かされます、



実はシエルは、ツェペリによって差し向けられた刺客でした。


シエルの記憶は全て作られたもので、鉱山で働いていた記憶も海の記憶も偽物。自由を知るきっかけとなった貝殻も小道具。シエルは僅か10日前に起動されたばかりで、全てはツェペリからインプットされた偽の記憶でした。


偽の記憶を植え付けた人造人間を姫に差し向ける……これがツェペリの策略だったのです。

フランドル故障。シエルが自分の部品を差し出す

フランシスカとの戦闘で、シエルはまたも傷付きました。
シエルは修復可能ですが、フランドルは修復不可能。部品が足りない為です。フランドルの修理ができず、1年しか生きられないシエルが直るという皮肉な展開に。



シエルは自分を分解し、フランドルを修理してほしいと姫に頼みます。
姫はそれを了承するものの、最期の望みを聞こうとします。

シエルの決意

シエルはツェペリの所へ向かいます。その手には爆弾を抱えて。ツェペリもろとも自爆する道を選んだのです。


自爆する直前、シエルの脳裏には海とフランドルの顔が浮かんでいました。


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ラストシーンで、庭仕事をするフランドル。ポケットから貝殻を取り出し、シエルの事を思い出します。シエルの「自分の事を忘れないで欲しい」との言葉通り、フランドルはずっとシエルの事を忘れずに過ごすのでしょう。




今回は怪物王女を見初めて、一番泣きました。本当に。
シエルがとにかく可哀想でしたし、フランドルとの関係が美くも儚すぎて。


そしてツェペリを本気で殴りたくなりました。


作中では悪趣味だと散々言われているツェペリですが、正直、あまりそうは思わなかったのですよ。たしかに趣味は良いとは言えないが、そこまでか?………と。



しかし、今回は初めてツェペリを悪趣味だと思いましたし、心底殴りたいと思いました。私がこの手で討伐しなきゃならないと本気で思いました!


海の記憶はシエルが初めて自由を知ったきっかけの出来事であり、シエルにとっての全てです。
フランドルに形見として貝を渡したのがその証拠。 それだけ海の記憶はシエルにとって大きなものだった訳です。


それが全て作り物だったと知ったシエルのショックはとても言い表せないものだったでしょう


アニメキャラに本気で腹が立ったのは『魔法少女まどかマギカ 反逆の物語』のキュウべえ以来ですあの時も「キュウべえ私がこの手で殺さなければならない」と本気で思いました。

真実を教えたのは姫の優しさ

シエルには知らない方が幸せだった真実なのですが、それをあえて教えたのは姫なりの優しさだったと思います。何も知らずに分解されればそれはそれで幸せだったかもしれません。


おそらく姫は『種族や個人のプライド』を重視しています。 1話の人狼ロボとの対決でも、真正面から戦いを受けた事で『決闘によって死んだ勇敢な戦士』になれたわけですし。
リザと戦った時も「戦士として戦った兄のプライドをふみにじるな」といっていました。

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また、シエルの寿命が短い事を知った姫は「自分で決めろ」と言っています。
自分の意思で行動を決めるという事も重視しています。


その姫にとって、シエルが操られている事を知らせずに分解するのは、「人造人間(ひいてはシエル)のプライド」を傷付ける事に等しかったのです。


ましてやシエルは短期間とはいえ、姫の家来として働きました。姫は家来をコキ使っても、裏切ったり名誉を傷付けたりは絶対にしません。


人狼もかつて姫の家来であったからこそ、最後まで戦士として勝負させ、無様な死に方はさせなかった訳です。

リザにも「自分は王族に命を狙われており、兄は自分を助ける為に姫への戦いを挑んだ」という真実を知らせています。その上でどうするかはリザに決めさせました。


ツェペリに騙されたシエルに対し、「真実を知った上で自分のやることを決めさせる」のが姫の信念の表れであり、優しさだったのです。

フランケンシュタインの怪物』のIFストーリー

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シエルとフランドルの関係は、『フランケン・シュタインの怪物』で描かれなかったストーリーと取れます。

同作の怪物は醜い容姿のため、恋人が出来ません。怪物は伴侶を造って欲しいと博士に頼みましたが、途中で博士が死んでしまい、その望みは叶いませんでした。


フランケン・シュタインの怪物が叶えられなかった夢を、シエルは一時とはいえ叶えられたのです。
シエルがフランドルに出会えたのは、非常な運命のシエルに訪れた唯一の奇跡だったのでしょうね。




あとがきが長くなりましたが、とにかく今回は本当に泣きました。
人造人間が生まれ変わる事はあり得ないのでしょうが、もしも何かの奇跡が起きるなら、生まれ変わってフランドルと再会して欲しいものです。